ある夏の朝、農園に行って驚いた
畑がめちゃめちゃに荒らされて、スイカやメロンが盗まれていた
犬の足跡に、人間の足跡が耕した柔らかい土に残っていた
スイカが大好きな息子が大泣き
自分でお水あげて大事に育てて、
「大好きな大ばあちゃんにあげるんだ」って言ってたのに、
ショックで熱出したよ
周りの農園の人も
「酷いね。最近道沿いの畑が荒らされたけど、
　ここは道から一番遠いとこなのに」って驚いてた
けど、農園仲間のおじいさんが
「多分だけど、〇〇村のやつだ。
　あいつら犬を散歩に連れてきてこの辺りで放し飼いにするんだ。
　それにAさんの畑に入っているのを見たことがある」って言ってた
Aさんは野菜を育てるのが上手で、
自分も美味しいトウモロコシをいただいたことがある
なぜかいきなり農園を辞めてしまって
どうしたのだろう？と思っていたところだった

うちの畑まで荒らされてすごく悔しくて、
悲しくて、腹立たしくって、
使わなくなったスマホを全部充電して畑に隠して録画した
来そうな時間は予測がついたので夜のうちに回収して確認した
1日目は失敗、2日目も途中でスマホが落ちて失敗、
3日目に少しだけど、
茶色い中型犬と小太りな中年女が写ってた
そして次の日の朝、畑仲間に印刷して配った

それから1か月くらいしてうちは畑を片付けた
もう作る気が無くなったんだよね
畑仲間に今までのお礼と挨拶をしてたら、
件の小太り女が警察を連れてやってきた
警官も面倒くさそうに、
「この人の犬がね、毒入りの何かを食べて死んだんですよ。
　何か知りませんか？」って言ってきた
みんな
「へー、そりゃ可哀想だな」
「拾い食いさせたらいけないよね」って言うだけ
警官が
「この人がね、毒入り物を置いたのは絶対に畑の人達だって言うんですよねー」
「はぁ？何で？証拠は？」って言うと、
「証拠も何も絶対にアンタたちに決まってる」って叫び出した
宥める警察官、怒る畑仲間、キレる小太り女でカオスな状況
「私達だって言ってますが、そうまで言うなら証拠あるんですよね？
　無いのでしたら名誉棄損ですよ」と言うと静かになった
結局は警官に宥められて帰って行ったんだけど、みんな憤慨していた

けど、私は知っている
毒団子を置いたのは一番初めに辞めたAさんだった
畑を辞めたAさんが夕方に畑に入り、
何を放って出て行った姿がスマホに移っていたんだよね
以前、「ホウ酸団子って効くのかな？」って聞かれたことがあったんだ
「ホウ酸は猫や小型犬なんかでも0,2ｇで致死量だからねぇ～
　ゴキには最強じゃないのかなー」
「ゴキブリかーｗうちの畑にさ、
　大きなゴキブリがいてさ、困ってんだよね」
「大変だね、うちの畑の果物を食い荒らす
　巨大なゴキにも効かないかなー。効けばいいのにね」
「巨大なのは無理でも大きい方だけでも駆除したいねー」
「そうだねー」

Aさんが亡くなったのを知ってそんな会話をしていた事を思い出した
でも、私たちが話したのはあくまでゴキブリ退治の話し
犬や泥棒の話しでは無いのだから

けど、Aさんの団子にホウ酸を追加したのは自分
食べるか食べないかは飼い主の躾け次第だしね

入れなければただのお団子